超越瞑想法で高血圧を予防する

質問:高血圧や心臓病の原因としては、何が考えられますか?

バーンズ博士:高齢、遺伝性素因、太りすぎ、ほとんど運動しない生活習慣といった要因と、それに加えて塩分やナトリウムの摂りすぎなどの食事面の要因が、高血圧の原因であると一般に考えられています。また、慢性および急性の心理的・環境的ストレッサーに曝されていると、心臓血管がストレスに過剰反応を起こし、それが高血圧の発現にとりわけ大きな役割を果たしているという仮説もあります。このような理由から、超越瞑想のようなストレス軽減のための技法を規則的に実践することはきわめて有効であると考えられています。

ストレスに対する反応として血圧の過度の上昇が持続的に起こる場合、当然、それに伴って心筋と血管壁に緊張が生じます。超越瞑想の実践を長期間続けると、副次的効果として心血管系の構造の適応力が高まるという仮説が立てられています。つまり、心筋壁と血管壁の緊張が正常に戻るような形で血管壁と心筋壁が改造されるということです。

質問:超越瞑想法はどのようにして血圧を下げるのですか?

バーンズ博士:高血圧の発現にはストレスが関与しています。それについては、血圧の疫学的研究、血圧と生理と日常の出来事の間の関係についての自然的研究、行動刺激に対する心臓血管と神経内分泌の反応についての実験的研究を通して実証されています。

心と身体にはきわめて密接な結びつきがあります。超越瞑想法を実践すると、心がリラックスして安らぐと同時に、内面がはっきり目覚めるという主観的体験が得られます。瞑想の反応はとても速やかに起こり、その効果は瞑想を開始してから15~30分後にもっともはっきりと感じられます。精神的なリラックスは生理のリラックスを導き出します。つまり、心が落ち着くと、身体は深い休息を得ます。

質問:超越瞑想プログラムを実践して血圧が下がるとき、どのようなメカニズムが働いていると考えられますか?

バーンズ博士:環境のストレスや心理的ストレスに慢性的にさらされていると、交感神経系はストレスに対して急激な興奮を起こしやすくなり、その結果、神経系の生化学のバランスに乱れが生じます。このような変化はストレスへの過剰反応を引き起こします。その証拠となるのが血管の収縮や血圧の上昇です。

超越瞑想法の実践はストレスを軽減しますが、こうした穏やかな要因は交感神経系に影響を与え、その結果、急性のストレスに対する血圧の反応が減少します。また長期的には、深刻な出来事に対する心臓血管の反応が減少するため、心臓の負荷が軽減され、血圧値が低下し、その結果として高血圧の早期の発症が予防されます。

質問:超越瞑想法は心臓病の予防にどのように役立ちますか?

バーンズ博士:超越瞑想を実践すると、高血圧の発症の原因となっている際限のないサイクルが断ち切られます。それによって血管と心筋の機能の変化が正常に戻り、その結果、安静時の末梢血管の収縮が緩和され、血圧が下がります。このように末梢血管の収縮が緩和して血圧が下がることによって、ストレスに対する心筋量および血圧の反応がいっそう減少します。

質問:研究では、超越瞑想法が心理に及ぼす影響についてどのようなことがわかっていますか?

バーンズ博士:ジェブニング博士と彼の同僚による論評記事(『神経科学と行動生物学の概観』1992年)によると、超越瞑想の体験は、覚醒と代謝低下の統合的反応を特徴とする生理状態を引き起こします。研究では、末梢筋肉と赤血球の代謝が低下するとともに、ストレスホルモンの分泌も減少することが報告されています。体が深く休息していることを示すこれらの特徴は、脳波計を用いた研究でも測定されています。さらに、呼吸数、血中乳酸値、皮膚電気抵抗値が減少するという研究結果も報告されています。

言い換えると、超越瞑想法を実践すれば、より単純でより落ち着いた意識の状態を体験し、その状態になるとストレスホルモン値が低下します。慢性のストレスがホルモン値に与える影響は十分に実証されてきました。瞑想はストレスホルモンの分泌にすばやく影響を与えます。例えば、瞑想中はストレスホルモンの活性化が抑えられ、それが長期にわたって続くこともあります。このように、科学的研究によって、超越瞑想法の規則的な実践が、高血圧患者の血圧を下げる助けとなることがわかっています。

質問:超越瞑想法の実践中に血圧が下がることを示す研究はありますか?

バーンズ博士:血圧は、心臓からの血液の拍出および末梢血管全体の抵抗によって生じます。したがって、血圧の低下が起こるのは、心拍出量が減少するか、血管収縮(血管内径の縮小)が緩和するか、あるいはその両方が起こるためです。末梢血管収縮の激化は、本態性高血圧の早期の発症に大きな役割を果たしているとされています。重要な点は、末梢血管収縮の激化が、高血圧の根本原因を生みだす血流力学的メカニズム(血液の循環に関与する動きと力に関するメカニズム)になっている場合が多いということです。

最近まで、超越瞑想法が末梢血管収縮に及ぼす影響に関して、入手可能な公表データがありませんでした。1999年に『心身医学』に発表された私たちの研究では、超越瞑想プログラムの長期実践者は血圧および末梢血管収縮の有意な減少を示しましたが、目を閉じてリラックスした非瞑想者の対照群は血圧および末梢血管収縮の増加を示しました。

質問:血圧に良い影響が現れるまで、どれくらい瞑想を続ける必要がありますか?

バーンズ博士:効果がすぐに現れることもありますが、効果の現れ方は人によって異なるので、どれくらい続ければ血圧が下がるかを正確に予測することはできません。研究の結果では、血圧が非常に高い人の場合、たいていは1~2か月以内に血圧の有意な低下を示しています。

質問:超越瞑想法はだれにでも効果があるのですか?

バーンズ博士:超越瞑想プログラムはだれにでも効果があり、初めて瞑想したときから効果が出るのが普通ですが、効果が現れるまでにしばらくかかる場合もあります。ストレスは高血圧に関連していることが多く、高血圧は心臓病の危険因子にもなります。超越瞑想法を毎日2回実践すれば、血圧が下げる可能性があります。超越瞑想を実践してストレスと高血圧が十分に低下すれば、薬物療法をやめたり、服用量を減らすことが可能になるかもしれません。

医師は、薬剤を処方する前の最初の治療段階として超越瞑想法を利用することも、あるいは、薬物療法に対する補助的な治療法として利用することもできます。

質問:患者はどの時点で薬物療法をやめることができますか?

バーンズ博士:それは、患者を診察している医師が一定の基準(たとえば、患者の血圧が少なくとも3回連続で正常値に達した場合)に従って決めるべきことです。患者が自分の判断で薬物療法をやめる時期を決めるべきではありません。患者を診察している医師は明確な治療目標を立てている場合があるので、患者は薬物療法については医師と相談するようにしてください。

質問:この治療法の将来性についてどのようにお考えですか?

バーンズ博士:医師が超越瞑想プログラムを患者に、とりわけストレスを受けているか、ストレス性疾患に悩んでいる患者に処方するようになる可能性は大きいと思います。この技法は、治療の観点から、標準的な治療法に変化をもたらす可能性がきわめて大きいと考えられています。